Craft Trend Fair 2024
GO FOR KOGEI特別展示「表現は細部に宿る」
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橋本雅也《Narcissus tazeta var.chinensis》2021年 鹿の角 作家蔵新里明⼠《luminescent…/curves》2024年 磁器 作家蔵入沢拓《after image》2024年 木 個人蔵橋本雅也《Narcissus tazeta var.chinensis》2021年 鹿の角 作家蔵橋本雅也《Miscanthus sinensis》2021年 鹿の角 個人蔵新里明⼠《luminescent…/curves》2024年 磁器 作家蔵新里明⼠《luminescent…/curves》2024年 磁器 作家蔵新里明⼠《luminescent…/curves》2024年 磁器 作家蔵[手前]入沢拓《link》2024年 木 作家蔵 展示風景「Craft Trend Fair 2024」(Coex Hall・韓国、2024年)入沢拓《tied forms》2024年 木 個人蔵Craft Trend Fair 2024「Craft Trend Fair」は、アジアの先進的な工芸を、芸術と産業の両方の側面から紹介する場として、近年国際的にも注目を集めているフェアです。2024年の第19回では、清州工芸ビエンナーレ2023の芸術監督を務め、GO FOR KOGEI 2023の国際シンポジウムにも登壇した康在英氏がアーティスティックディレクターを務めました。同フェアで実施したGO FOR KOGEIの特別展示では、「表現は細部に宿る」というテーマのもと、GO FOR KOGEI 2022の[特別展]に出展した入沢拓、新里明⼠、橋本雅也の3名の作品を紹介し、大きな反響がありました。
[テーマ]表現は細部に宿る
GO FOR KOGEIは、北陸という工芸が盛んな地域から、日本の工芸の魅力を発信する取り組みとして、2020年から開催している催しである。これまで現代アート、アール・ブリュット、デザインなどとのジャンル横断を試みながら、「工芸」という言葉だけでは語りきれない、豊かで広がりをもった作品を紹介してきた。本展では、過去に紹介してきたアーティストの中から、「表現は細部に宿る」というテーマのもとで入沢拓、新里明⼠、橋本雅也の作品を紹介する。
入沢拓は木工を生業としながら、独自に考案した楔止めの技法を用いてインスタレーション作品を制作している。細く切り出された木材を連結することで、手軽なオブジェやレリーフから、空間を埋め尽くす巨大な作品までもが生み出される。一度出来上がった作品であれ、どこまでも増殖し続けていく可能性を秘めている。その拡張性と自由自在な形態が持つ遊戯性が入沢作品の魅力だが、それらは常に小さな構造によって下支えされている。反復する楔止めがどのような形態的なバリエーションを生み出しているのか、細部と全体との関係に着目してもらいたい。
次に紹介する新里明⼠は、《光器》と呼ばれる作品で国内外から注目を集める陶芸家である。光器は、生地に細かな穴をあけ、透明釉をかけ焼成することで文様を浮かび上がらせる作品である。一般的なうつわとしても使用できるが、丁寧に彫り込まれた穴から入り込む「光」を蔵する容れ物にもなる。一見その穴は全体を被う装飾にもみえるが、うつわが本来持つ内と外とを貫く通路であるとも言えるだろう。近年では、意図的にひびを加えた作品もみられ、内/外の対称性を更に解体しようと試みている。そこに、かつてカンヴァスに穴を穿ち、閉鎖された絵画空間を拡張しようとした画家の姿を重ね合わせることもできる。
最後に、鹿の角や骨といった素材から、実物と見紛うような草花を彫刻する橋本雅也である。近年は木や土も素材として扱うが、それら全てに一貫して言えるのは、モチーフの存在そのものや生命への透徹した理性と、それらを形づくろうとする手探りの身体性とが両立している点にある。例えば、今まさに咲き誇る花のうちにも、花びらの微かなよれや枯れなどがみられ、時間に争うことのできない生命の姿を喚起する。そうした細部に、橋本作品ならではのリアリティが宿る。これまでその緻密さゆえに技巧が注目されてきたが、技巧は橋本にとって個別の生命と向き合うひとつの術と言っても良いのではないだろうか。
さまざまな表現の本質は細部に宿る。殊に工芸において細部展開あるいはそれを可能とする技術は最も注目される要素のひとつである。ここで展覧する三名もそれぞれに異なった細部への意識を持っている。しかし、細部をクローズアップしただけでは、その作品の本質に迫ることはできない。入沢の作品における形態と構造との関係をはじめ、新里における内と外、橋本における見えるものと見えないものなど、全体と細部とを統合することによって初めてその重要性が明るみになるのではないか。彼らの美的な作品はその一例に過ぎないが、細部に宿る表現世界に注目していただきたい。Artists入沢拓、新里明⼠、橋本雅也Overview- 会期 2024年12月12日(木)-15日(日)
- 会場 コエックス
- 主催 認定NPO法人趣都金澤
- 助成 文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター等育成・文化施設高付加価値化支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会
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