Asia NOW 2024
GO FOR KOGEI特別展示《民藝スピリット「貧」》
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コレクティブアクション《民藝スピリット「貧」》2024年 着物 個人蔵 展示風景「Asia NOW 2024」(パリ造幣局博物館、2024年)Photo: Nadia Ermakova.コレクティブアクション《民藝スピリット「貧」》2024年 着物 個人蔵 展示風景「Asia NOW 2024」(パリ造幣局博物館、2024年)Photo: Nadia Ermakova.コレクティブアクション《民藝スピリット「貧」》2024年 着物 個人蔵 展示風景「Asia NOW 2024」(パリ造幣局博物館、2024年)Photo: Nadia Ermakova.コレクティブアクション《民藝スピリット「貧」》2024年 着物 個人蔵 展示風景「Asia NOW 2024」(パリ造幣局博物館、2024年)Photo: Nadia Ermakova.コレクティブアクション《民藝スピリット「貧」》2024年 着物 個人蔵 展示風景「Asia NOW 2024」(パリ造幣局博物館、2024年)Photo: Nadia Ermakova.コレクティブアクション《民藝スピリット「貧」》2024年 着物 個人蔵 展示風景「Asia NOW 2024」(パリ造幣局博物館、2024年)Photo: Nadia Ermakova.コレクティブアクション《民藝スピリット「貧」》2024年 着物 個人蔵 展示風景「Asia NOW 2024」(パリ造幣局博物館、2024年)Photo: Nadia Ermakova.コレクティブアクション《民藝スピリット「貧」》2024年 着物 個人蔵 展示風景「Asia NOW 2024」(パリ造幣局博物館、2024年)Photo: Nadia Ermakova.Asia NOW 2024パリ・アートウィークの一環として開催される「Asia NOW」は、多様化するアジアの現代アートを紹介するプラットフォームとして、2015年に始まったアートフェアです。アジアのアートシーンを牽引するゲストキュレーターや招聘団体がキュレーションする特別展示を特徴とし、近年大きな注目を集めています。GO FOR KOGEIは、10回目を迎えた2024年に初参加することとなりました。同フェアでは、美術家の吉田真一郎とキュレーターの秋元雄史によるアーティストコレクティブ「Collective Action」が手がけるインスタレーション作品《民藝スピリット「貧」》を展示し、それを象徴する自然布の仕事着を通して「貧」の美を提示しました。
[テーマ]民藝スピリット「貧」
Asia NOW 2024では、美術家の吉田真一郎とキュレーターの秋元雄史によるアーティストコレクティブ「Collective Action」が手がけるインスタレーション作品『民藝スピリット「貧」』を展示します。それを象徴する自然布の仕事着を通して、「貧」の美を提示します。
民藝の美は、貧の美である。貧の美は全てを捨てた先にある。貧とはミニマルである。自らを律し、万物に感謝し、ムダを省き、生きる。自然布は、そんなかつて日本の生活の中で存在した美である。自然布の美は、金満的な美の真逆である。江戸時代から明治時代までに制作された自然布の仕事着を通して、民藝的なスピリットを再評価し、今日的なアートとして再提示する。かつての自然布によって製作された仕事着と、それを再評価するコンセプト「貧」を提示する。
仕事着に使われた自然布は、野山に自生する植物から繊維をとって織られた布である。自然布の種類は、科布、藤布、葛布、紙布、芭蕉布、大麻布、楮布などがあり、全てが野山に自生する植物か、それを栽培したものが原材料である。草や茎の皮などをから長い時間かけて糸をつくり、織っていく。野良着や袴、風呂敷、袋など、様々な用途を持つものをつくり、生活の中で用いられてきた。
仕事着を支える民藝的なスピリットとは、
① 生活の中の美、庶民の美
② 環境に負荷をかけないものづくり。エコロジカル、リサイクル。
③ 自然素材、手に入りやすい材料
④ 家族的な集団性による制作など
*[参考資料] 民藝の特徴を『日本民藝協会の「民藝」の趣旨―手仕事への愛情』から参照する。
1.実用性:干渉するために作られたものではなく、実用性を備えている。
2.無名性:特別な作家ではなく、無名の職人によって作られている。
3.複数性:民商の要求に応えるために数多く作られたものである。
4.廉価性:誰もが買い求められる程度の値段の安いものである。
5.労働制:繰り返し激しい労働によって得られる熟練した技術を伴うものである。
6.地方性:それぞれの地域の暮らしに根ざした独自の色や形など、地方色が豊かである。
7.分業性:数を多く作るため、複数の人間による共同作業が必要である。
8.伝統性:伝統という先人たちの技や知識の積み重ねによって守られている。
9.他力性:個人の力というより、風土や自然の恵み、そして伝統の力など、目に見えない大きな力によって支えられているものである。
また、そこに宿る民藝美の内容は、柳宗悦は「無心の心」、「自然の美」、「健康の美」であると説明している。
[展示]自然布の中心を担う、壁面に展示された大麻布とその白さの意味について
大麻布は1万年以上前に大陸から日本に伝わり、神事の装束から野良着に至るまで、広く日常生活の中で使用されてきました。しかし、産業革命以降、機械化の波に押されて大麻繊維の生産はほぼ途絶え、さらに第二次世界大戦後に制定された大麻取締法によって国内生産は禁止されました。しかし、環境への負荷が少なく、痩せた土地でも成長するその特性から、近年では再び世界的に注目を集めています。
今回の展示では、江戸時代末期から明治初期にかけて織られた古着と、最新技術を駆使して100%大麻繊維の機械織りを実現した「majotae」の布を展示します。これらの布は、1万年にわたる歴史的蓄積と現代のテクノロジーが融合することで生まれたものです。白という色が持つ深遠な魅力と、それが織りなす新たな可能性を感じていただけることでしょう。
日本において「白」は、神聖性や純粋性、清浄性、そして時には死や再生をも表す、多様な意味を持つ色です。同時に、「白」は「素」の状態、つまり物事の本質や無垢な始まりを示す色としても捉えられています。特に、日本で古くから親しまれてきた大麻布は、その象徴的な存在です。水で洗われ、日光にさらされるたびに、柔らかさと白さをまし、空の如く無垢な白へと変化していきます。この「白」は、日光によってその色が失われた、まさに「何もない」状態を体現しています。
吉田は、大麻布を通じて「白」という色に内在する微妙な違いに目を向けています。「ただの白布と思えば、全て同じものを見ているように感じるが、実際には同じ白は一つも存在しない」と述べる彼の言葉は、手仕事と時間が織りなす「白」の豊かさを示唆しています。吉田は、そのわずかな違いが生み出す「気配」こそが、「物事をどのように見るか」という、布を超えた哲学的な問いかけへと我々を導くと言います。ArtistsCollective Action
Collective Actionは、美術家であり、自然布の蒐集家・研究家として知られる吉田真一郎とキュレーターの秋元雄史によって結成されたアーティストコレクティブ。吉田は、かつては白を追求するペインティングを制作していたが、ヨーゼフ・ボイスとの出会いから制作そのものを見直し、古美術や民俗学を学び、「白の探求」という視点から、苧麻布や大麻布の研究や収集、発表を40年以上にわたって行っている。秋元は、美術評論家、キュレーターであり1991年から直島のアートプロジェクトに携わり、地中美術館館長をはじめ金沢21世紀美術館館長、東京藝術大学大学美術館館長・教授、練馬区立美術館館長を歴任し、2021年から「GO FOR KOGEI」の総合監修・キュレーターを務めている。
majotae(協力)
⽇本⼈が古くから使い続けてきた素材「⼤⿇布」が本来持つしっとりと柔らかい極上のテクスチャーを、現代の技術を駆使して甦らせた日本発のテキスタイルブランド。19世紀以前の大麻布づくりの手法である手積み・手織りの工程を研究し、さまざまな手作業の工程を最新の技術やノウハウに置き換えることで、これまで不可能と言われてきた100%の大麻繊維を機械で織ることに成功し、国際特許を取得。Overview- 会期 2024年10月17日(木)-20日(日)[4日間]
- 会場 パリ造幣局博物館
- 主催 認定NPO法人趣都金澤
- 助成 文化芸術活動基盤強化基金(クリエイター等育成・文化施設高付加価値化支援事業)、独立行政法人日本芸術文化振興会
- 協賛 三菱UFJフィナンシャル・グループ
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