千年の未来に続く「祭」を、この手で。8/29-30 千年未来工藝祭 2020

和紙、打刃物、箪笥。古いもので千年を超える歴史を持つ伝統工芸の産地として知られる越前市で、今年で3回目となる「千年未来工藝祭」が開催されます。「CoNEXTion(コネクション)=共につながる」をキーワードに産地、作り手、使い手、そして工藝と未来がシナプスのごとく連鎖的に反応し合う、未知の可能性を秘めた2日間。

  • (右から)「千年未来工藝祭」のプロデューサー・内田裕規氏、越前打刃物職人・戸谷祐次氏、越前和紙の伝統工芸士・瀧英晃氏。日々ものづくりに携わる3人の言葉は、シンプルでありながら前向きで力強い。いやはや、男前です!

  • 千年未来工藝祭のプロデューサーを務める株式會社HUDGE」代表の内田裕規(うちだ・ひろき)さん。福井県内外の店舗や企業などのブランディングやアートディレクションのほか、浜町パン祭りや未来酒場などのイベントなども手がける。

  • 2020年度の実行委員長・戸谷祐次(とたに・ゆうじ)さんは、タケフナイフビレッジを制作拠点とする越前打刃物の伝統工芸士。「Sharpening four」の3代目として日々現場に立ちながら、ロックバンド・Experimental crossbreedのベーシストとしての一面も!

  • 越前和紙の里である今立の「株式会社滝製紙所」で伝統工芸士として製作を行う、瀧英晃(たき・ひであき)さん。昨年の「千年未来工藝祭」の実行委員長を務めた。

今回は、「千年未来工藝祭」のプロデューサーであるアートディレクター・内田裕規氏、2020年の実行委員長を担う越前打刃物職人・戸谷祐次氏、2019年の実行委員長で越前和紙の伝統工芸士・瀧英晃氏、まるでロックミュージシャンのような出で立ちの3人から「千年未来工藝祭」にかける熱い想いを伺いました。

 

これまでの千年、これからの千年

 

−千年未来工藝祭はどのように始まったのですか?

 

内田 2013年頃から越前市を中心に伝統工芸士さんが集まって、「ててて協働組合」を手がける永田宙郷さんをアドバイザーとして、ものづくりの勉強会をやっていたんですよ。それが5年続いたんで、そろそろ何か形にしてみてはどうか?という話になって。それで僕が永田さんからバトンを引き継いで、作り手が直接販売をするクラフトフェスを企画することになりました。

正直言って、この「千年未来工藝祭」をスタートした時はイベント乱立状態で、週末はどのSNSからもたくさんのイベント情報があふれていたんです。だからこそ、たくさんの人に届くイベントになるように、コンセプトにはめちゃくちゃこだわりましたね。

 

−ネーミングも気になりますが、コンセプトはどんな思いが込められているのですか?

 

内田 ちょうどバトンを引き継いだ2018年の5月に、越前和紙の産地で千三百年の大祭が行われて、仕事で撮影をさせてもらったんです。その祭りは毎年5月に山の神様を神輿を担いで迎えにいき、5つの神社を巡ってまた山へ返すという儀式を、険しい山道を歩きながらみんなボロボロになってまで愚直にやるんですが、車も使えて、道も整備できる現代において、それが変わらない形で1300年も続けられているということに、僕自身がすごく熱いものを感じて。だからこそ、これも「祭」だと。「千年という未来まで続く祭」にしたいという願いを込めて、この名前にしたんです。

 

 

  • 千年未来工藝祭2020のメインビジュアル。公式サイトから昨年のアーカイブや最新情報がリアルタイムに更新されるので、ぜひブックマークを。

  • 昨年の「千年未来工藝祭」の様子。プロジェクションマッピングやDJなどが加わり、フォトジェニックな会場の一体感は来訪者を驚かせた。

−伝統工芸に携わる当事者であるお二人は「千年未来工藝祭」をどんな風に捉えていますか?

 

瀧 僕自身が越前和紙の伝統工芸士として千三百年の大祭に関わってきたので、すごく共感できますね。僕たちはこの大祭を、神社を通じてつながり、世代を超えて続けてきたわけですけど、「千年未来工藝祭」も神社のような場所になってほしい。伝統工芸という枠にとらわれず、このイベントに関わる人が「来年も再来年も続けたい」と感じてもらえたら、もう千年続くんじゃないですかね。

 

戸谷 たしかに「千年」ってバカみたいな数字ですよね(笑)。でも、目先だけではなくて実際に進んでいかなくてはならない時間なんですよ。僕は打刃物の伝統工芸士として日々ものづくりをしていますが、古いものが必ずしも良いというわけではない。伝統は大切にしつつ、それを継承しながらも、時代に合ったものを作り続けられるかという「覚悟」だと受け取っています。

  • ブースで自社製品を販売する瀧さん。店頭に立って様々な客層の人々と直接会話できたことはとても新鮮だったそう。

  • 職人が直接教えるワークショップ。自社の技術を改めて意識することで、日々の製作へのモチベーションアップにもつながった。

「祭」という集合体で気づき合うこと

 

−実際に2回実施て、産地や作り手、周辺の様子で何か変化はありましたか?

 

内田 千年未来工藝祭はクラフトマーケットがメインになるんですが、ふだんものづくりをしている職人さんが店頭に立っても、売り方がわからないんです。だけど、ディスプレイや接客に長けた売り手が一堂に会することによって、職人さんにとっても刺激になり、勉強になっているみたいです。これからはもっと、出展者同士が意気投合してコラボする機会が生まれると良いですね。

  • 戸谷さんが拠点としている打刃物の工房施設「タケフナイフビレッジ」。右手の三角屋根の施設は新たにオープン予定のギャラリーショップ。

戸谷 僕はふだんも制作の拠点としているタケフナイフビレッジでお客さんに会う機会はあるんですが、千年未来工藝祭に来られる客層が全然違って。一緒に出展している人たちと話せる機会も貴重で、同世代のつながりによる情報交換は非常に大事だなと感じました。「朝何時から仕事してるの?」とか、そういう雑談さえできることが興味深かった(笑)。

 

瀧 他の店が目当てで来場したお客さんが、僕の商品に示してくれるリアクションはすごく新鮮でしたね。うちみたいな小さな会社だと、ふだん接客をしない従業員さんがお客さんに直に接する機会もつくれて、それぞれのモチベーションアップにつながっているみたいです。

  • 「タケフナイフビレッジ」の工房内にて。この場所から戸谷さんたち職人が、火花を散らして鍛錬をする作業風景を見学することができる。

ゼロからイチを生み出すために

 

−今年はコロナウイルスの影響で昨年に比べて制限が多い中、どんなプログラムを予定していますか?

 

内田 今年は「産地オンライブ」を予定しています。オンラインライブ形式と事前に収録した動画を配信します。基本的には無料配信で、質問したい人はチャットでやりとりできるようにしたいなと思ってます。現地ではワークショップとキッチンカーもいくつか用意します。和紙、打刃物、箪笥のそれぞれの産地の会場で各組合主催のイベントを同日開催するので、それらを周遊タクシーなどを使ってまわってもらうこともできます。

 

瀧 去年はもちろんコロナもなく、1年目の実績もあって集客も非常に伸びました。「将来は自分も出店者として参加したいです」というメッセージまでいただき、夢と現実の接点を生み出す場所になっているのは嬉しいです。だって、今始まった新しいものづくりが、千年経てばそれは「工芸」ですからね(笑)。

実際、コロナのようなこういう状況だと、行政の方も「やめましょう」っていう流れになると思うんですけど、越前市は違いましたね。前向きに検討してくれて、ほんとうの意味で「千年」ってことを理解してくれているんだなと思います。

 

−戸谷さんは今年実行委員長ですが、昨年が成功した分、プレッシャーじゃないですか?

 

戸谷 そうですね(笑)でも、これまで千年未来工藝祭や産地に足を運べなかった人もいると思うんです。だから今回はそういった方々に届けるための良いチャンスじゃないかなと。こんなコロナごときで、産地が元気をなくすわけがないよっていう姿を見せたいですね。ポジティブに「攻め」でいきたいと思います。

 

 

−これからの「千年未来工藝祭」についての思いを聞かせてください。

 

内田 千年続けるというのは、コロナに限らず様々な危機的状況においても、ゼロからイチを生み出せる力だと思います。コロナがなかったら、僕たちは昨年どおりの要領で開催していたと思うんですが、今回は新しいイベントを作るがごとく企画しています。もちろんすごく大変ですが、こうして続けられた工芸はそれだけの底力があるということ。

これからは、千年未来工藝祭がみなさんから愛され、必要とされていって、日本、さらにアジアのものづくりが集まる祭典、ミラノサローネみたいな場所になると良いですね。

 

戸谷 僕はこういう前代未聞の年に実行委員長を務められることは幸せだなと思いますね。だって歴史に残りますから(笑)。次の千年へと続けられるために、1年1年作っていくことが大事かな。

 

瀧 もう1000分の3回やったから、このまま1000回いけるでしょ(笑)。

今回をきっかけに参加してもらえる方の間口が広げられると思っています。実際、映像コンテンツなんかは、コロナのことがなければやらなかったことかもしれないし。こういった状況を逆手にとって、どんどん進化していけるんじゃないかって期待しています。

 

 

 

千年、脈々と受け継がれてきた伝統工芸。それは、その時代を生きる人々の瞬間瞬間の積み重ねなのだということを、改めて感じさせられました。危機的状況においても作り出せる力がある産地が、そばにあるというだけでとても心強い気持ちになります。千年未来工藝祭で、さらにもらいたい!パワー!

 


 

<開催概要>
千年未来工藝祭

期間:2020年8月29日(土)・30日(日)
時間:未定
会場:タケフナイフビレッジ
主催:クラフトフェス実行委員会
共催:越前市
料金:無料
URL:https://craft1000mirai.jp/

両日共にタケフナイフビレッジの特設会場にてオンラインイベントを開催。

 

サステナブルフードトラック「MissEden」を手がけるモデルの森星さん&発酵人の田上彩さんや、IDÉEの創始者である黒崎輝男さんとのトーク、越前と台湾と香港を結ぶ番組など、オンラインコンテンツが盛りだくさんです!GFKとのコラボ企画もあります!

 

<主なコンテンツ>

GFK × 千年未来工藝祭
工藝都市計画Live 配信 越前 × 台湾 × 香港
CRAFT SOUNDSCAPESS
越前打刃物古式鍛錬 など

 

 

PROFILE

内田裕規(うちだ・ひろき)プロデューサー / 株式会社HUDGE 代表

1976年生まれ。越前和紙の里・旧今立町で育ち、デザイン会社「株式會社ヒュージ」代表。コミュニケーションデザインや企業ブランディング、地域リノベーションを手がけ、「千年未来工藝祭」等、様々なイベントの企画のプロデュース/ディレクションに携わる。文化創造拠点「FLAT」や、ものづくりの作り手を繋ぐ場「CRAFT BRIDGE」創設。一般社団法人「北陸古民家再生機構」理事も務め、自然農に携わった経験も活かしながら、カテゴリーを越えた働き方を実験的に行っている。

 

戸谷祐次(とたに・ゆうじ)2020年度 実行委員長 / 越前打刃物 研ぎ師

1976年5月 越前市生まれ。タケフナイフビレッジ協同組合常務理事、戸谷刃研三代目研ぎ師。現在Sharpening four代表、伝統工芸士。地元企業で設備保全、電気工事など10年間の会社員を経験した後、2005年に家業の研ぎ師に転身。主に両刃包丁、ペーパーナイフの製造、研ぎ直しなどを担う。2015年からはフランスパリで研ぎ実演と講習を行い、また、シフォンケーキ型抜き用ナイフを共同開発、各方面で紹介される。趣味は音楽活動。雑種現代音楽カルテットExperimental crossbreedのBassを担当、県内外での活動も行う。

 

瀧 英晃(たき・ひであき)2019年度 実行委員長 / 越前和紙 伝統工芸士 / 滝製紙所

福井工業大学卒業。内装材メーカー、デザイン事務所を経て、2005年に株式会社滝製紙所入社。2019年に伝統工芸士に認定。伝統を継承しつつ、時代に流されない和紙の製造を心掛ける。千年未来工藝祭やRENEWといった、福井の産地、地域、工芸の持続をテーマとした企画の運営にも携わる。

佐藤実紀代(ライター)

1981年、福井生まれ、北陸育ち。おとなりの金沢大学でフランス中世美術(主にロマネスク様式とタピスリ『一角獣と貴婦人』にハマる)を研究。卒業後、印刷会社、書店、デザイン事務所を経て独立。DTPスキルと本への偏愛を活かし、福井駅から徒歩3分の場所に本をつくる小さな本屋 HOSHIDOを構える。2019年に福井の伝統工芸である若狭塗箸の職人の本『はしはうたう』を出版、絶賛販売中!!